絃の名前
お箏の絃は13本あります。これらの絃の名前は一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、斗、為、巾となっています。
何故1~13ではないの?斗、為、巾ってなんだろう?と思いますよね。
実は、数字の方が後から付けらた名前で、もともとは、「仁智礼義信文武斐蘭商斗為巾(じん、ち、れい、ぎ、しん、ぶん、ぶ、ひ、らん、しょう、と、い、きん)」と呼んでいました。
奈良時代(8世紀)に中国から伝わってきた箏は、初めは雅楽の楽器として取り入れられました。
口伝で伝承されてきた雅楽の体系をまとめた「教訓抄(きょうくんしょう)」(狛近真(こま、ちかざね)著、1233年)の中にすでに、これらの文字が見受けられます。
また、中国の古い文献には、箏を「仁智の器」と呼称しているものもある、ということなので、絃の名前も楽器と共に伝わってきたのかもしれません。
これらの文字には、同じく中国から渡ってきた「論語」の五徳と同様に、例えば「仁」は「思いやりを持つこと」、「智」は「知識を重んじること」といった意味が一文字ずつに込められていました。
後に、この絃名を分かりやすく漢数字に置き換えようとした時に、例えば「十一」と書くと「十」と「一」を同時に弾くのか、「十一」を弾くのか区別ができないという問題が発生し、十一、十二、十三は、元の斗、為、巾が残ったと言われています。
数字の絃名は分かりやすいですが、一文字一文字意味を持たせて、人生の教訓を込められた昔の絃名は、いにしえの人々がいかにお箏と音楽を大切にしていたかが偲ばれます。
参考:
琴光堂:http://www.kinkohdo.jp/middle/
教育芸術社:http://www.kyogei.co.jp/shirabe/iroiro/a_koto.html
「箏入門の為の小品集」吉崎克彦著 大日本家庭音楽会 1990