お箏の大きさ
現在一般的に「お箏」と呼んでいるものは、絃が13本あり、長さが6尺(182cm程度)幅が27cm程度あります。
お箏は奈良時代に渡来してきてから、様々な改良が加えられてきました。
しかしながら、その長さは、奈良時代から現代にいたるまで、ずっと180cm位から190cm位で、それほど変化がありません。
一方で、それより短い「短箏」(86-160cm程度)もあります。
保管のしやすさや、持ち運びの簡便さ、学校での取り入れやすさから、現在たくさん作られていますが、短箏も作られたのは最近のことではありません。
江戸時代にも、旅の道中で弾くためや、幼年時の練習用に作られた記録があり、そのうちのいくつかは現存しています。
「お箏」と「短箏」の最大の違いは、音色です。
楽器が小さくなると、絃の長さが短くなります。短くなると音が高く、張りのあるものになります。柔らかく余韻のある音色を奏でるためには、6尺という長さがどうしても必要になるのです。
明治になり、西洋音楽が日本に入ってくると、様々な音楽表現をするために、高音域よりも低音域が求められるようになりました。
大正10(1921)年、宮城道雄は低音域を担当する大型の箏、十七絃(213×33cm程度)を開発しました。昭和4(1929)年には、ピアノの八十八鍵にならい、八十絃のお箏も試作しています。
昭和30(1955)年には三十絃箏(235×56cm)、昭和44(1969)年に二十絃箏、平成3(1991)年に二十五絃箏(181.5×37.5cm)が誕生しています。
現在では、一つのお箏で低音域も担当できる、不思議なお箏(万葉箏)も開発されています。
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千年以上経っても、こんなに改良され続けている楽器は、他にあるのでしょうか。
新しい音楽に出会うたびに、改良が加えられていくお箏は、永遠に開発途上なのかもしれません。
参考:箏と筝曲を知る辞典 宮崎まゆみ著 東京堂出版2009
「紀州徳川家伝来楽器の箏について」野川美穂子 国立歴史民俗博物館研究報告
第166集 2011.3